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9月5館目:内藤礼 明るい地上には あなたの姿が見える/水戸芸術館現代美術ギャラリー

久々に美術班遠足で水戸に行ってきました。きっかけは内藤礼さんの個展。私が今のところ国内で一番好きな美術館が瀬戸内海の豊島にある豊島美術館でして、この美術館は内藤礼さんの「母型」という作品だけを展示している美術館なのです。内藤礼さんの作品を他にたくさん見たことがあるわけではなかったので、少々遠いけれどこの展覧会にはぜひ行ってみたいと思っていました。美術班に緩めにお声掛けしたものの、暑いさなかだったので、涼しくなったらね~とそのまま放置になってた。日曜美術館のアートシーンに出たり、朝日新聞の夕刊に出たりして、ぼちぼち会期終了も近づいてきて、天気予報をにらみつつもう一回お声掛けしたところ、結局全員(4人)で行けた~。しかも社長に車を出してもらえてゴー!お世話になります。
水戸芸術館と言えば、あのグネグネしたタワーがランドマークになっていて、まずはそれを観るのが楽しみだった。タワーを知ったきっかけは、2011年の震災の時。水戸の放送局からの映像に必ず写っていて、あれはなんだろう?と思っていました。インター降りたくらいから遠くに発見できるのでは?と思っていましたが、結構近づいてからやっと見えました。近くで見て、正三角形を組み合わせた多面体だと知りました。満足。

内藤礼さんの展示は自然光のみで行われているそうで、雨曇りの天気予報だったこの日、私たちが着いた時間は曇天の光での鑑賞になりました。晴天だとどうだったかはわからないけれど、私は結構好きな感じの光の加減だった。私が思っている内藤さんの作品のイメージから大きく外れない、繊細な表現で空間を作っている印象。監視員の方々が目を光らせていて、そこから先は作品があります~と必死に鑑賞者をサポートしてくださっています。とても必要なのですが、あの真っ白な空間に紺色のユニフォームの監視員さんがやたら目立ったのが何となく残念、、、と思ってしまった。鑑賞者の方が人数は多いのにそれはあんまり全然気にならないのですが、監視員さんは神経をとがらせているからなのか、どうしても存在感が出ちゃうんだろうな。誤解のないように書いておくと、監視員さんがいない方が良いというのではないんです。視力が怪しい私は作品リストに書いてあるのが見つけられず、教えてもらったりして、いつも以上にお世話になりました。つまり、きっとそれくらい作品が繊細だったんだと思う。こういう展示って難しいな~。監視員さんがラフな格好をしてたら違ったのかなあ。豊島美術館は確かそんな感じだった。

繊細、繊細と繰り返し書いたけど、あの作品を今思い返すと、作家の勇気の結晶のように思えてくる。限られたモチーフを複数の部屋にちりばめて1つの世界観を提示する。その中でたった1つしかないモチーフもあれば、無数に繰り返されるものもあって、その選択と決定を繰り返して「明るい地上には あなたの姿が見える」を表現したのだから。
印象に残っているのは、暗い廊下から暗い部屋に置いてある2つ並んだ瓶を観たとき景色。その後ろに明るい部屋への入口が見え、その明りによって瓶が背後から照らされ半分だけ明るく光っているように見える。そしてそれが暗い床に反射している。それともう一つが、暗い部屋の床に置いてある小さな鏡に明るい部屋が写り込み、その光が床に反射した景色。

コンサートホールも、そこを本拠地としている楽団も評判がいい水戸芸術館。ロビーに展示されていた子供たちの水彩画も素晴らしかったし、こんな施設が近くにあったら豊かな気持ちがするだろうと羨ましくなる施設でした。来られて良かった。

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by fumiko212 | 2018-09-30 18:04 | アート | Trackback | Comments(0)

9月番外:桑原弘明さんのスコープを観に恵比寿ギャラリーめぐり

ノグチ、メディアアートを見た後は、新宿のヤマハで1時間チェロの練習をし(発表会直前だった)、最後の力を振り絞って恵比寿の2つのギャラリーに出ている桑原弘明さんのスコープを観に行きました。

まずは東口側のMalleという画廊へ。グループ展で桑原さんの作品は2点。1つはガラスドームに入ったもの、スコープは1点。実は長らく桑原さんの作品を観ていなかったのです。いつからか情報を追いかけられなくなって。それが最近、日曜美術館で、青森県立美術館にスコープが展示されているというのを見かけたことで思い出し、ツイッターのアカウントを見つけて、この展示のことを知りました。感覚では10年ぶりくらいじゃないか?と思ってブログを見直したら、2011年に見てました。それでも7年ぶり。何が変わったって、自分が老眼になったのがつらい。あの小さな作品を観られるのか?老眼鏡をかけて見たら何とか、、、自分の記憶もあいまいだけれど、以前見たものよりも一段と小さくなったように感じました。数カ所から光を当てたように記憶していたけれど、今回観たものは1か所からのライトのオン・オフで見るものでした。正直、小さすぎてちょっとよくわからなかった。後日、ご本人が鏡に何が映っているかわかりましたか?とツイートされていて、鏡があったかも思い出せない体たらく、、、情けない、、、同時に展示されていた四谷シモンの「人形の手」。手の木彫、、、最近これに悩まされていたから、なんでこんなに繊細に!!!とくぎ付けになりました。こういう表現もあるのか。

もう1軒は西口のロータリーからアトレの裏に少し坂を上ったところにある、LIBRAIRIE6という画廊。こちらもグループ展に出品されていました。こちらのオーナーは若い女性で、小さな空間に書店も併設されているおしゃれなギャラリー。この方がとても気さくな雰囲気だったので、桑原さんを観るのは実は10年ぶりくらい(その時はそんな感覚だった)なんです、と話したところ、そのころと違って、今はもう桑原さんの作品はとても買えるものではなくなってしまったんですよ~とのことでした。今は新作の個展の3日前から徹夜で並ばないと買えないし、お値段も、、、とのこと。自分のブログを見返すと、2008年の個展のことが書いてあって、作家さんご本人がいくつも空いた明り取りの窓からペンライトで照らしてくださったことが思い出されます。こちらの画廊で見た作品は明り取りの窓が2か所。2008年の作品では6通りの見え方があったようです。作品が一段と小さくなったように感じたので、小ささを追求する方向に進んでおられるのかも?今回の展示品が偶然そういうものだったのかな?この画廊にももう1点スコープ以外の作品が出ていました。文鳥の卵を使ったというこれまた繊細すぎる作品。めまいがしそうです。他の展示作品ではヒグチユウコさんのペン画がすごかった。年明けに世田谷文学館で個展があるそうなので是非とも見たくなりました。それから山下陽子さんという方のコラージュ作品も良かった。

日曜美術館の話に戻ると、青森でスコープが展示されていた企画展は「めがねと旅する美術館」というもので、桑原さんのスコープ作品のタイトルは「星を売る店」。ムットーニもテーマにした稲垣足穂の同名の短編小説が題材なのではないかな?観てみたい。この展示、現在は島根に巡回中で、11月には静岡県立美術館に巡回するそうなのです。スコープ以外もテーマ自体が面白そう。忘れないようにしないと~。

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by fumiko212 | 2018-09-24 02:26 | アート | Trackback | Comments(0)

9月4館目:オープン・スペース2018イン・トランジション/NTTインターコミュニケーション・センター

オペラシティ内にぐるっとパスで入れる施設がもう1か所あったので頑張ってハシゴした。受付でぐるっとパスを出すと、現在の展示は無料なので必要ありません、と言われてしまった。でもスタンプは押しますよ~とのことでいただきました。(スタンプを押す場所がついてる)

チームラボでデジタルアートに親しんだけど、あれ以上に面白いものってあるのかな?といぶかって、さらっと見ようと荷物を持ったまま見始めたら、面白い!とロッカーへ逆戻り。自分が輪切りになってオブジェの中のモニターに映る作品とか、自分の動きをAIが学習して展開していく作品とか、一人でカメラの前で暴れまくってしまった。ちゃんと覚えてくれました。

そんな最先端技術の作品が多数ある中で、私が一番面白かったのはもっとアナログな作品。電話ボックスの前に6だか8画面のモニターがあり、それぞれいろんな国や場所の電話機が写ってる。それぞれの画面で物語はすでに始まっていて、受話器を持ち上げるとその中の1つが明るくなって自分がそこに写る電話機に電話をかけている状況になる。誰かが出て話し始めると受話器からあっち側の音が聞こえてくる。受話器を戻してもう一度上げると別の画面へ、、、と結局全部の映像分受話器を上げてしまった。

解説を読まずにざざっと見て回っただけだったけど結構楽しめました。最近、不意にめまいが出ることがあるので、VR作品とか密室みたいなのにはチャレンジできなかったけど、ハシゴじゃなくて単独で見に行ったら、もう少し体力が残っていて、解説をじっくり読みながら体験できたらもっと面白かったと思う。来年3月までやっているので、チャンスがあればもう一回行ってもいいかな。たぶん行けないけど。

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by fumiko212 | 2018-09-24 01:47 | アート | Trackback | Comments(0)

9月3館目:イサム・ノグチ 彫刻から身体・庭へ/東京オペラシティアートギャラリー

ぐるっとパス購入のきっかけとなったもう一つの展覧会がこれです。2年前(だったか?)の秋にモエレ沼に行って、前よりもずっといろいろ見たいと思っていたイサム・ノグチ。東京での回顧展、うれしい。
初期の墨絵というよりはむしろ書に近いドローイング作品、抽象化される前の人物の彫刻作品、舞台芸術など、知らない世界から始まった展示。最初の抽象彫刻作品群は、自分が良く知っている石像ではなく、陶器や鋳鉄制の作品が並んでいました。その中にハッとする作品があった。○を付けたので間違いないと思うのですが、1956年の「個我」という作品。ガマの穂みたいな形をした円柱を3本指で握ったような形をしたものが立っていて、横から近づいていき、正面に達した時に、その中心の裂け目から奥に4カ所開いた穴が見えた。その4つの穴は本当の真正面に立たないと見えない。ドキッとしました。
後半は庭の展示。モエレ沼で「地球を彫る」というノグチの言葉を読んでいたのと、モエレ山の頂上から見た景色が焼き付いているのとで、小さな模型を見ても自分が小さい人になって山の頂上から見るという楽しみ方がすぐにできた。展示を立った姿勢から見下ろしても全然面白くない。模型の一番高い山に目線を合わせて、そこから全体を見ると、ノグチの意図がおおお!と感じられるのだ。さらに、低い場所に目線を合わせて周りの山を見上げたり、小さな丘の上に目線を合わせたり、展示ケースの周りに膝をついてぐるぐる回る変な人になって見まくった。誰もやってないけど、これ上から見下ろしても何もわからないのになあ、、、と思いながら。
モエレ沼ほどの規模ではないけれど、映像で紹介されていてぜひとも行ってみたくなったのが、チェイス・マンハッタン銀行プラザの沈床園。もう一つがイエール大学バイニキ稀覯書・写本図書館のための沈床園。一般人が入れるのだろうか?どちらも撮影2017年とあるので現存はしていると思うのだけれど、、、
最後の石の彫刻の部屋では「アーケイック」という作品に○がついてる。四角柱の巨大な作品だったと記憶。香川県立ミュージアムからの作品。香川と言えば、まだ行けてないノグチのアトリエもあるし、空港の外にも作品が一つあるそう。またいつか瀬戸内アートめぐりするときは絶対に行くぞ~。

さて、今まで知らなかった、この美術館の収蔵品展も見てきました。これが良かったのです!前半は同じ画家のモンドリアンとミロが混じったような抽象絵画を延々と見せられて後悔しかけたのですが、後半の展示が良かった。同じく抽象絵画なのですが、パンチがきいた作品が並んでいて、作家もいろいろだったので飽きることなく集中して見られた。リー・ウーファンがあったのがうれしかったし、春に世田美で収蔵品展をやっていた村井正誠の黒の線が盛り上がる作品の別バージョンを観られたのもタイムリーでよかった。村上友晴の名前もあって、この人の展示が目黒区で始まるのだよなあ。日本の抽象絵画の画家の名前を覚える日が来るとは、、、気にしてみていると頭に入るものなのだなあ。タイムリーと言えば、数年前にノグチに行かず丸亀で見た猪熊弦一郎(主目的は谷口建築でしたが)。先日のクレパス展で一番気に入ったのがこの人の作品で、オペラシティに抽象画がかかってて、昨日見つけたチラシで10月から横浜の馬の博物館というところで猪熊弦一郎展があると知った。これは見に行かねば、、、と思ってます。

20代の頃は映画館の予告や演劇のチラシを観ては次の作品を物色していたけど、今は美術展のチラシを物色する日々です。

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by fumiko212 | 2018-09-24 01:27 | アート | Trackback | Comments(0)

9月2館目:フィンランド陶芸 芸術家たちのユートピア/目黒区美術館

庭園美術館から歩いていける、そしてぐるっとパスで入場できる、目黒区美術館で、閉会間際のフィンランド陶芸展を見てきました。フィンランドと言えば、のアラビア窯で制作された陶芸作品の数々。北欧アンティークの店で見るのとはまた違う、独創的な作家ものの作品の数々は、北欧ブームの続く今の日本人の美意識にすっと入ってくるものばかり、なんだと思った。ジャポニズムと同様に、フィンランド陶芸も万博(1900年のパリ万博)をきっかけにヨーロッパでブームを巻き起こしたという歴史にも親近感がわく。このブームで民族の伝統技術を評価されたことが彼らを勇気づけ、ロシアからの独立の機運が高まることにもつながったのだとか。ヨーロッパに評価されて勇気づけられる、という感覚もなんとなく親近感。しかし、ロシアからの独立への原動力に、、、という解説には驚かされました。
もう一つ、解説によると、この時期のフィンランド陶芸は、イギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動の影響を受けているのだそうで、この夏何度も見た、濱田庄司の陶芸と同じルーツを持つことも親近感を抱くきっかけになった。私にとっては、中国・朝鮮からわたってきた陶磁器よりもこっちの流れの方がとっつきやすい。

1950年代頃の作品の展示室にあった陶板絵や飾り皿が素敵だった。青を基調とした「菫」というタイトルの絵皿。しばらく見入ってしまった。吸い込まれるように深い青の濃淡。忘れられない。

初めて訪れた目黒区美術館は小さいながらもすっきりとした空間が気持ちよく、行き方もわかったので(世田美ほどではないが駅からは遠い)、今後の企画展も気にしておこう。やっぱりぐるっとパスを買ってよかったな~。

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by fumiko212 | 2018-09-24 00:33 | アート | Trackback | Comments(0)

9月1館目:ブラジル先住民の椅子/東京都庭園美術館

8月最後に9月は美術館行けるかなあ、、、と弱気なことを書きましたが、ふたを開けてみればぐるっとパスのおかげもあってガンガン通っている状況です。
ぐるっとパスを買おうと決心したのは、対象の展示で見たいものが2つあって、その2つだけで元が取れると分かったから。相変わらず発想がセコイ、、、そのうちの1つが本展でした。直接の友人・知人、インスタをフォローしている好きな人たちがこぞって絶賛していたのでこれは行かねばと!私の中では今年度今のところ一番良かった縄文展にかなり僅差のベスト2にランクインする展覧会となりました。行ってよかった~。

ブラジル先住民の椅子、と聞いてイメージしていたのは、例えばメットのロックフェラーギャラリーにある南アメリカ・オセアニアの展示品にあるような土着的、呪術的な造形。アールデコの庭園美術館とイマイチ結びつかない。しかし、それは私の間違った固定観念なのだったと縄文展の時と同じように1点目の作品で気づかされ、この作品世界の虜になってしまった。造形としてはプリミティブな部分が多分にあるのだけれど、アールデコ空間に気持ちよく溶け込みながら強烈な存在感もある。
第二の驚きは、これらが古代の遺物ではなく、現代の作家に技術が受け継がれて、一目では時代の見分けがつけられないような同じ技法で作り続けられているということ。かつては集落の有力者のための椅子として作られていたものが、現代では椅子としてではなくインテリアとして扱われることもあるという点を除けば、造形も色も模様も時代にかかわらず共通している。
展覧会の副題に「野生動物と創造力」とあるように、椅子は必ず生物の形を持っていて、地域によって哺乳動物、鳥、魚、両生類、、、と姿を変えていく。椅子は褐色に染めてあり、そこに黒や赤で文様が描かれる。それは彼らの美しい褐色の肌の色であり、模様は伝統的なボディペインティングと同じものが描かれているのだとか。

映像展示では、現代の作家が森に入り、木を切り倒すところから制作の過程を取材した映像が紹介されていました。1本の木から10程度の椅子が作られるのだそうで、その作業は10人の作家が共同で行います。斧で木を切り倒し、それを大まかに10個の丸太に分け、各作家が自分の丸太をある程度椅子の形まで荒くそぎ落とします。迷いのない斧の仕事でみるみると椅子の形が切り出され、一人で持ち運べる程度までになるとそれを担いで工房へと持ち帰ります。森から持ち帰るのは最小限の木材だけ。木端は森へ残すのです。工房へ戻ると、大きなナイフのような道具で表面が滑らかに削られていく。そのあと植物染料で表面を彩色し模様を描く。迷いなく動く作家たちの肉体と無駄のない形に削り出され褐色に染め上げられる椅子が、同じように美しい。

多くの国の先住民がそうであるように、彼らも過酷な歴史を持っているのだろうか、、、伝統的な技術を現代に受け継いでいることが彼らの誇りが保たれていることの証明のようにも感じた。というかそう願いたい。一方で、先住民のしきたりにおいて、椅子に座れるのは男性だけで女性は足を延ばして床に座る、という解説を読むと、文化を守ることと人権を守ることの折り合いをどうつけるのかなあ、、、ということも考えさせられたり。芸術、美術鑑賞はそういった御託を並べずに純粋に観るべきなのかもしれないけれど、私はやっぱり時代や社会背景があっての芸術・美術だと思うのです。それを踏まえても美しいものはやはり美しい。

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by fumiko212 | 2018-09-24 00:03 | アート | Trackback | Comments(0)

8月3館目:ムットーニコレクション/世田谷文学館

4月から新しくなった常設のムットーニコーナーを見に世田谷文学館に行ってきました。実は、世田文にムットーニ展でないときに行くのは初めてでして、今まで、常設のムットーニを見たことはなかったのだ。
企画展ビーマイベイビーに興味がないわけではないのですが、何しろ展示を見るのに時間がかかるので、今回は常設だけ。

常設のムットーニコーナーは1階です。せたがやアーツカード割引で団体料金160円也を支払い入場。申し訳ないほどの格安料金です。
上演は毎時30分ごとに展示中の7作品を2つに分けて行っていました。すべて見るには最低でも約1時間半の滞在が必要です。ムットーニコーナーの奥では斎藤茂吉、北杜夫に関する資料の展示(コレクション展)があり、こちらも30分では見きれないほどの充実した展示ですので、時間を持て余すことはありません。

新しいムットーニコーナーには昨年の個展から、題のない歌、蜘蛛の糸、アトラスの回想、の3作品が加わりました。この3作品については、白い壁に作品のモデルとなった文学作品の抜粋(題のない歌は全文)が大きく書かれていて、上演時間外に読みながら眠る舞台を鑑賞するのも一興かと思います。特に題のない歌はバーの内装などの細かい造形を動いてないときこそじっくり見られるので必見です。個展のときには気づかなかった、カウンターの奥の電話機の存在に気づきました。電話の手前に電話代を置く銅の小皿があることに気づき、これは一体いつの時代の設定なのか?と新たな想像を掻き立てられます。バーの壁にかけられた絵画も気になり目を凝らしたのですが、左側の2枚はムットーニの作品のミニチュア?のようにも見えたのですが、右側はよく見えず、単眼鏡持参で再訪しなくてはと思ってます。作家自身の作品がかかる狭い部屋はゴッホの寝室を連想させ(部屋の作りが台形であることも寝室の不定形な部屋の形と通じるものがある)、カウンターの奥の酒瓶がぎっしり並んだ棚のイメージからは同じくゴッホの夜のカフェを連想しました。ゴッホとムットーニがイメージでつながることがあるとは思ってなかった。

書きかけの歌(スビリット・オブ・ソング)以外はムットーニの語りが流れます。蜘蛛の糸は上演会で見られたことがなかったので、語り付きで見るのは初めてでした。北杜夫に関する展示コーナーで三島の自筆原稿を見た直後だったからか、三島の存在をジトッと感じる鑑賞となりました。

既存の4作品は、スビリット・オブ・ソング、眠り、漂流者、アローン・ランデブー、の順に上演されます。前回個展で1度しか見られなかった、眠りをじっくり見られたのがよかった。あれは他のどれとも似ていない狂気を感じる作品です。それから展示室の壁が白なので、アローンランデブーの背面ライトがいつも以上に美しく感じたな。

現在、猫町、山月記、月世界探検記はメンテナンス中とのことで展示されていません。今後はコレクション展の展示替えに合わせてムットーニコーナーも作品を入れ替えながら展示替えを行うとのこと。ちなみに現在のコレクション展は9月17日までです。企画展のないタイミングでムットーニコーナーだけを見られたらもしかして独り占め鑑賞ができるのでは?と夢想したのですが、企画展と同日に閉会するので、次の企画展が始まるまでに見られるのかは謎です。聞いてくればよかった。新しくできたというムットーニコーナー専用のパンフレットもゲットできました。

帰りがけにライブラリーものぞいたところ、今まで気づいていなかったムットーニ書籍が数冊まとめて開架しており、幻と思っていた不思議人形館もありました。パラパラとめくると古い時代の知らない作品が細かく掲載されており、これはぜひともじっくり読みたいと静かに興奮。以前からネットで検索していたのですが確か在庫がいつもなかったと記憶。また時間をとってここに来て読もうと思いながらも帰宅後に検索したらAmazonで中古価格でいっぱい出てる!しかも状態非常に良いがある!ということでやっと買えた〜。諦めずにしつこく検索すればいつかは買えるものなのですね〜。嬉しい。

収穫はそれだけじゃなく、文学館のコレクション展が期待以上に面白かったことも新発見だった。世田美もですが、土地柄、世田谷ゆかりの作家の遺族からの寄贈という形で充実したコレクションを有していることが伝わる展示で、これからは展示替えごとにムットーニ詣でとともに鑑賞したいと思いました。

9月は美術館行けるかな…。久々にチェロの発表会を控えており、後半は企画展の端境期にもなりますから、行くなら前半勝負。ぐるっとパスを買おうか悩み中です。もしお休みしたら8月に読んだ美術関連本の感想でも書こうかな。

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by fumiko212 | 2018-09-03 02:45 | アート | Trackback | Comments(0)