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「ロートレック展」@サントリー美術館

「ロートレック展」@サントリー美術館_b0031055_2002619.jpg先日、サントリー美術館で開催中のロートレック展に行ってきました。
ロートレックは好きな画家です。最初にいいなと思ったロートレックの絵は、90年代のはじめに広尾にできたパリ風オープン・カフェの老舗、カフェ・デ・プレのハウスカードに印刷されたアリスティド・ブリュアンのポスターでした。モンマルトルに生きる人々を描き続けたロートレックの様々な作品を見ていくうちに、対象を見つめるロートレックの視線のやさしさが感じられるようになり、益々好きになっていきました。

今回の展覧会では、サントリー美術館蔵のポスターコレクションを中心に、リトグラフや版画集、挿絵を担当した出版物など、版画を中心とした展示が充実した展覧会でした。油絵はオルセーなどから何点か。数は多くありませんが、ダンスホールのダンサーの舞台裏を描いたもの、娼館の娼婦達の日常を描いたものなど、目を引く作品がいくつかありました。

会場の一番最初のコーナーに、展覧会のポスターにもなっている「黒いボアの女」が展示されていました。娼館のマダムがモデルでしょうか?きつめのお化粧をし、髪をきりりと結い上げています。ゴージャスなボアで縁取られた顔の白さが際立ち、更にその中心からこちらを見つめる目の力が鋭く捉えられています。ロートレックの絵で、このように画家を見つめた人物の作品というのは珍しいような気がします。心に残る絵です。
「ロートレック展」@サントリー美術館_b0031055_20124599.jpg油絵でもう1点印象的だったのがこの作品。「女道化師シャ・ユ・カオ」。ドレスのブルーとフリルの黄色、壁のグリーンとソファの赤、と補色を使った色使いがとても美しかった作品です。補色といえばゴッホがよく使っていますが、薄暗い舞台裏の一こまだからでしょうか?補色でありながらこなれている感じが都会派のロートレックらしいなーという印象がとても気に入った1枚でした。(うーん、ボキャブラリが貧弱で情けない…。)
「ロートレック展」@サントリー美術館_b0031055_20134351.jpg今回の展覧会では、ロートレックが手がけたポスター全作品が展示されているそうです。中でも目を引くのはやはり出生作の「ムーランルージュ、ラ・グーリュ」。大きな紙を3枚はぎ合わせた巨大なポスターは、見慣れた絵なだけに、やはり実物を見た感動は大きかったです。
同じ展覧会場に展示されていた、ジュール・シェレ作のムーランルージュのポスターと比べると、そのモダンさ、斬新さが際立ちます。このポスターが町中に貼られ、当時のパリの人々が「ムーランルージュのポスター見た?」と噂しただろうなーなどと想像するとワクワクします。
前景にヴァランタンの黒い影、中央に主役のラ・グーリュ、奥にラ・グーリュを取り囲む常連客たちの影、と広重の名所江戸百景の版画を思い起こさせる構図です。広重の版画(特に名所江戸百景)でもそうですが、見ている側もその場にいるような臨場感がロートレックのポスターにはあります。きっと、ロートレックはダンサー達が本当にこんな風に見える席でいつも彼らを眺めたりスケッチをしていたのではないでしょうか?
「ロートレック展」@サントリー美術館_b0031055_20203257.jpgもう1枚ロートレックのポスターで好きなのがこの作品。「ディファン・ジャポネ」というカフェ・コンセール(ミュージックホール)のポスターです。この女性はダンサーであり、ロートレックの芸術を深く理解し、ロートレックとは深い友情で結ばれていたというジャヌ・アヴリルです。彼女の背筋の伸びた美しい姿勢と横顔はロートレックの彼女への敬愛の気持ちが現れているように思います。舞台に突き出すコントラバスの影はドガのオペラ座の舞台を描いた作品を思い起こさせます。
ダンスホールやカフェ・コンセール、ダンサーや歌手など、ショービジネスに関するポスターがよく知られているロートレックですが、他にも、本や雑誌のポスターも手がけていたことは今回初めて知りました。また、出版物の挿絵を担当したり、と出版界との繋がりも強かったのだそうです。
以前、別のロートレック展で見てとても好きになった作品、娼婦達の日常を描いた版画集「彼女たち」の展示もありました。この作品は、娼婦達と生活をともにしたロートレックだからこそ描けた、彼女たちの日常の何気ない表情を捉えた作品です。不幸な境遇であっても、自分の力で生きている娼婦達の内面や強さ、また、彼女たちのつかの間の安らぎなどが感じられる作品が揃っています。1点ずつは小さな作品なので、さらっと流して見ている人が多かったように思いますが、ぜひ、1点ずつじっくりと見て欲しいなーと思う作品です。

パリで描かれたロートレックの作品を見ていると、また、モンマルトルを散歩したくなってくるような、ロートレックが生きた時代のパリの空気があふれる展覧会でした。
by fumiko212 | 2008-02-26 20:11 | アート | Comments(6)
Commented by もっち at 2008-02-27 08:01 x
これポスターみて行きたいと思ってたんです。私もロートレック好き!
中学のころ初めてポスターをみてその斬新なスタイルに驚きました。
当時油絵(しかも風景画)ばかり見てたので、こんな表現方法もあるんだ!と。
この時代の作品みると、なんだか当時のモンマルトルに自分もいる気分になりますよね。
Commented by fumiko212 at 2008-02-27 11:53
もっちさん
さすが~っ。中学生のときなんて、絵のこと全然知らなかったです。笑
ロートレックもだけど、もっちさんだったら、国立新美術館で3/26から始まる「モディリアーニ展」もご興味あるのでは?
http://modi2008.jp/
携帯の待ち受け画面のDLとかもできるみたいですよ~。楽しみだなー。
Commented by もっち at 2008-02-28 00:25 x
おお~これは行かねば!
国立新美術館デビューにはもってこいですね。
風景画ばかり見てた私が人物に興味をもったのはモディリアーニを見てからなんです。あの青い目と長い首が妙~に気になったんですね(笑)
会期も長いけど、早めにいっておきたいな~。
Commented by fumiko212 at 2008-02-28 12:31
もっちさん
ね、ね、良さそうですよねー。私も国立新美術館デビューしようと思います!始まった頃に行けば青山霊園のお花見もセットにできるかも?
ロートレックは会期後半ですごく混んでいたので、始まってすぐに行ったほうがいいですよねー。
Commented by まっち at 2008-02-28 21:12 x
うちにはムーランルージュのポスター、飾ってあります。カミサンが結構前に買ってきたんだけど(しっかりした額に入ってけっこう高かったらしい)、我が家の黄色い壁によく合っています。そういえば六本木界隈の新しい美術館、どこも行ってないよ。会社から歩いていける距離なのに。
Commented by fumiko212 at 2008-02-28 22:42
まっちさん
うちにもムーランルージュのポスターあります!A3の安物ですが…。それでも結構いい感じになじんでます。黄色い壁には合いそうですねー。
美術展って会期に余裕があったりするとなかなか行けないことってありますよねー。サントリー美術館はそんなに広くなかったので、8時までやってる金曜日なら会社帰りでも結構じっくり見られると思いますよ。って、残業しちゃったらムリですが…。


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