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9月1館目:ブラジル先住民の椅子/東京都庭園美術館

8月最後に9月は美術館行けるかなあ、、、と弱気なことを書きましたが、ふたを開けてみればぐるっとパスのおかげもあってガンガン通っている状況です。
ぐるっとパスを買おうと決心したのは、対象の展示で見たいものが2つあって、その2つだけで元が取れると分かったから。相変わらず発想がセコイ、、、そのうちの1つが本展でした。直接の友人・知人、インスタをフォローしている好きな人たちがこぞって絶賛していたのでこれは行かねばと!私の中では今年度今のところ一番良かった縄文展にかなり僅差のベスト2にランクインする展覧会となりました。行ってよかった~。

ブラジル先住民の椅子、と聞いてイメージしていたのは、例えばメットのロックフェラーギャラリーにある南アメリカ・オセアニアの展示品にあるような土着的、呪術的な造形。アールデコの庭園美術館とイマイチ結びつかない。しかし、それは私の間違った固定観念なのだったと縄文展の時と同じように1点目の作品で気づかされ、この作品世界の虜になってしまった。造形としてはプリミティブな部分が多分にあるのだけれど、アールデコ空間に気持ちよく溶け込みながら強烈な存在感もある。
第二の驚きは、これらが古代の遺物ではなく、現代の作家に技術が受け継がれて、一目では時代の見分けがつけられないような同じ技法で作り続けられているということ。かつては集落の有力者のための椅子として作られていたものが、現代では椅子としてではなくインテリアとして扱われることもあるという点を除けば、造形も色も模様も時代にかかわらず共通している。
展覧会の副題に「野生動物と創造力」とあるように、椅子は必ず生物の形を持っていて、地域によって哺乳動物、鳥、魚、両生類、、、と姿を変えていく。椅子は褐色に染めてあり、そこに黒や赤で文様が描かれる。それは彼らの美しい褐色の肌の色であり、模様は伝統的なボディペインティングと同じものが描かれているのだとか。

映像展示では、現代の作家が森に入り、木を切り倒すところから制作の過程を取材した映像が紹介されていました。1本の木から10程度の椅子が作られるのだそうで、その作業は10人の作家が共同で行います。斧で木を切り倒し、それを大まかに10個の丸太に分け、各作家が自分の丸太をある程度椅子の形まで荒くそぎ落とします。迷いのない斧の仕事でみるみると椅子の形が切り出され、一人で持ち運べる程度までになるとそれを担いで工房へと持ち帰ります。森から持ち帰るのは最小限の木材だけ。木端は森へ残すのです。工房へ戻ると、大きなナイフのような道具で表面が滑らかに削られていく。そのあと植物染料で表面を彩色し模様を描く。迷いなく動く作家たちの肉体と無駄のない形に削り出され褐色に染め上げられる椅子が、同じように美しい。

多くの国の先住民がそうであるように、彼らも過酷な歴史を持っているのだろうか、、、伝統的な技術を現代に受け継いでいることが彼らの誇りが保たれていることの証明のようにも感じた。というかそう願いたい。一方で、先住民のしきたりにおいて、椅子に座れるのは男性だけで女性は足を延ばして床に座る、という解説を読むと、文化を守ることと人権を守ることの折り合いをどうつけるのかなあ、、、ということも考えさせられたり。芸術、美術鑑賞はそういった御託を並べずに純粋に観るべきなのかもしれないけれど、私はやっぱり時代や社会背景があっての芸術・美術だと思うのです。それを踏まえても美しいものはやはり美しい。

by fumiko212 | 2018-09-24 00:03 | アート | Trackback | Comments(0)
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