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ゴッホ展~The adventure of becoming an artist~ その3

実は一度書いたものが消えてしまったので、備忘録的に他の絵について思ったことなど。

・入口のボール紙に描かれた肖像画。今回2点あった肖像画ではこちらのほうが好み。ゴッホの深いグリーンの瞳に吸い込まれる。

・初期のポプラ並木と後期の積み藁。遠くから見たときの積み藁の絵の画面の明るさ。アルル時代のテオ宛の手紙で、ゴッホがもっとも多く注文していたのが白の絵の具だったそうだ。日本の浮世絵のような明るい画面を作るためにゴッホはあらゆる色に白を混ぜて使っていたのだとか。その効果が新旧の作品を並べることでよくわかった。一方、解説文にあったように、初期の作品も補色で構成されていたことは新たな発見だった。

・あ!ドービニーの作品がある!ドービニーの庭が見たくなってしまった。

・ドローイング。1枚目にあった少女の横顔の作品。丁寧に模写された服の柄の部分を見ると、描いているゴッホの手の動きが生々しく感じられドキドキする。

・ドローイング。農民の手の表情が素晴らしい。過酷な労働がにじみ出ているような手だ。これも描いていたゴッホの手を思い起こさせる。ドローイング、思ったよりも充実していて、もっと見たくなった。ゴッホのドローイング展、日本でもやってくれないかな。METで見たmさんが羨ましいっ。

・農民の肖像。どうしてこんな悲しみが宿った瞳が描けるのか。宗教画のようにも見えてくる。また、後期の肖像画においても一貫しているのは、ゴッホは尊敬できる人物しか描いていないということ。つくづく正直な人だと思う。いや、ルノアールやモディリアニの肖像画では、ああ、この人のこと嫌いなんだろうな、っていうのがあるから、正直なのは皆同じか。

・麦わら帽子の静物。これ好き。麦わら帽子のモフモフ感がいい。

・パリ時代。ゴッホとロートレック、2枚仲良く並んだカフェに座る女性の作品は、彼らの友情を思い起こさせ、緊張感に満ちた作品が並ぶ中でホッとくつろいだ気持ちになれるコーナーだった。

・アルル時代。ジュートに描かれたゴーギャンの椅子。ゴーギャンが買い2人で使ったというジュート。生地自体の暗さ、絵の具を吸収する繊維、ゴーギャンに習った薄塗りの画面は粗い織り目の凹凸が影となり画面を益々暗くする。赤と緑という光を吸収する色を使っていることもあってか、明るい画面を目指すゴッホには適さない画布だったように感じる。逆にゴーギャンの画風には適している。きっと、ゴッホはこの新たな挑戦にもワクワクと取組んだのだろうが、思い通りにならないストレスも感じたのではないか、と思ってしまう。

・蟹の絵。緑の背景。地味だけどはっとする作品。パリ時代の青い背景のひまわりと並べたい。三谷さんのお芝居「コンフィダント」で、女性の肖像の背景がなぜ青なのか?と問われたゴッホが「見たままを描いた。彼女の後ろには青が見えるだろ?」というシーンがあったが、これ違うんだな。「彼女が黄色(オレンジ色)のドレスを着ているからだよ。」が正解。

・サン=レミ時代。療養院の庭。大きく張り出した木の存在感が主役だが、左の黄色い壁と藍色の空がこの絵をゴッホの絵にしている。木の緑の中に赤い花のように見える描写。もしかしたら影?ここにも緑と赤。細かい筆致の葉の描写が主役のこの絵でも、私は色に注目してしまう。
この時代のゴッホ作品を狂人が感情に任せて描いた、とか神経衰弱の表れ、のようにいう人がいる(いるんです。未だに。混んだ展覧会ではそういう会話が聞こえてくる。)が、描いているときのゴッホはいつでも穏やか、冷静で、描く喜びをいつでも感じていた、とこの絵を見てもわかってもらえないのか。

・アイリス。思ったよりもくすんだ印象だったのはなんでだろう?壁の色、額縁のせい?いつも見ている印刷が明るいのか?

・オーヴェール、麦の穂。小さな作品だけど好き。画面には麦の穂だけが描かれているが、6月の、金色に色づく前の青い麦畑が風に揺れる情景が浮かぶ。かつて小澤さんの指揮するオーケストラの演奏をホールの二階席中央から見下ろしていたときに、弦楽の弓が波打つ様子がゴッホの麦畑の絵のようだ、と思ったことを思い出した。小澤さんの指揮から風が起こっているような演奏だった。
6月のオーヴェール・シュル・オワーズにも行っておくんだった、と少し後悔。

・ガシェの肖像のエッチング。背景から、あの庭で描かれたことがわかる。穏やかなゴッホの心が感じられる作品。

・聞こえてきたおもしろ会話。じゃがいもの静物の前で女子2人が「ゴッホってじゃがいも好きじゃない?」「じゃがいもっておしゃれ、みたいな?」わはは。いいなー。

・聞こえてきたイライラ会話。アルルの寝室の前でカップルが「ゆがんでるよね。」「もうおかしくなってきてるんだよ。」はあ?振り向いて説教しようかと思った。

・物販。トリミングに愛がない、と感じた商品多数。

最後のほう、相当うざくてスイマセン。ゴッホ様愛が強すぎてー。

今回の展覧会を一言で表すと、やはりゴッホは色彩の画家だ、っていうこと。もっともっと他の作品を見たくなってしまうなー。

最後にまとめでもうひとつ書きたいことがあるので、もう1話つづきます。
by fumiko212 | 2010-10-05 23:29 | アート | Comments(5)
Commented by yuricoz at 2010-10-08 08:02
すごい!!チェリーパフェも、すごい美味しそうだけど

この感想3部作は、愛があるっ!!

一応、私は書く側を少しやっていたので、感想はいらない。
だから、私もあまり強く感想を書きたくない派だったのですが
これをゴッホに見せたいなー。
きっと、嬉しいと思う。。。

色々な感想を書く人がいるけれども、どれも似ていたり、悪くいうとちょっと薄っぺらい。それは、とってもしょうがない事なんだけど、備忘録とかちょっとした感想を書きとめておこう♪という事なのは、十分わかるし、それを基本に見よう♪と思う人もいるから大事なのかな?とも思う。

でも、このfumikoさんの感想は、あっやっぱり時間作って行ってみようかな?行ってみたい!!と思わせるし、いや、行った気分にさせてくれる。笑
Commented by yuricoz at 2010-10-08 08:02
切れたーーーーつづきーーーーっ




実は、MARIさんのところで、図録をじっくりみさせていただき、デッサン(ドローイングかな?)画がすごく多くて、これはとても見たい!!と思いました。

私は、授業で一番嫌いだったんです。笑
3分づつ、1枚を完成するというデッサンの授業で、苦痛だったーー。笑
でも、今となっては、すごい重要な授業だったなーと思っているわけで、って、ここで長くなってどうする。笑

ツイッタで、消えたショックを見た時から早く読みたかったので、ほっとしました。笑
Commented by fumiko212 at 2010-10-09 01:20
yuricoさん
読んでくださってありがとうございます!
コメントくださったこと、私も同じように思っている部分があって、私は描く側だったことはないのでそこは違うんですが、「強く感想を書きたくない派」という感じは、私もそうだなって思います。
私の場合、カッコウつけようとすると、どうしようもない、どこかで読んだようなことを書いてしまうとわかっているので、書き始めたらとまらなくなるようなときだけ書こう、と思ってます。

それにしても、、、3分でデッサンを仕上げる授業ですか。画家の筋トレみたいなものなのですよね。(発想が体育会系でスイマセン。)私だったらえんぴつ削っている間に終わりそうだ。笑 かっこいいなー。

ゴッホは油絵でも手の動きが伝わってくるような作品ばかりですが、ドローイングはその動きがリアルに目に見えるようでした。油絵よりも時間をかけていそうな印象があるのも不思議でした。きっと絵を描く方ならもっといろいろ感じるところがあるのではないかなーと思います。
Commented by matc_tomo at 2010-11-22 18:06
先週の金曜は夜8時までだったので、いってきました。
行ってからfumikoさんのエントリーを読み返すと、「そうなのよ!」と思っちゃうところが多くて、ありがとう!
7時頃は混んでいても自分のペースで回れるくらいでしたから、のんびりと。
農民たちの絵での手の動きや描写を見てから、なぜか作品ごとの手の動きを注視するようになってしまった(笑)
カニの絵は、なんでひっくり返ってる!と衝撃でしたけど、やはり色彩がとても豊かでつい見とれちゃう。
感受性が強い人だったのか、いろんなところが細かくて見入ってしまいます。
そうそう、ガチャガチャのジグソーパズルがあったら教えてくださいね〜。再チャレンジするっ!
Commented by fumiko212 at 2010-11-23 22:21
ともりんさん
お疲れ様でした。
展覧会見た後に読み返してくれたなんて嬉しいです!
>農民たちの絵での手の動きや描写を見てから、なぜか作品ごとの手の動きを注視するようになってしまった(笑)
あ、なんかわかる。一度気になるとそこばっかり気になってー、ってことあります。なんでもいいからそういう軸ができるとその展覧会がおもしろく見られていいと思ってます。
ガチャガチャなくなってないといいなー。会期中にもう1度くらい物販だけ見に行きたいです。笑


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