久々の美術班活動で、竹橋で開催中のゴーギャン展へ。
ゴーギャン晩年の代表作「我々はどこからきたのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」が来日しています。 日本初公開のこの作品、私は2006年~2007年にかけてMETで開催された企画展「セザンヌからピカソまで:前衛のパトロン、アンブロワーゼ・ボラール」で一度見ていました。あのときの企画展でも目玉の1点だったのですが、そのほかの作品群が豪華すぎて、そんなに強烈な印象が残ったわけではなく、ちょっと拍子抜けだったのでした。今回はどんな風に感じるかな? ゴーギャンといえば、やはりアルルでのゴッホとの共同生活とその末の悲劇を思い出さずにはいられません。 ゴーギャンを自分達の世代のリーダーと感じていたゴッホこそ、ゴーギャンの才能をいち早く見出していた人物でした。ゴーギャンはゴッホのことをどう思っていたのか?テオの金銭的な援助が目当てでアルルに行ったにすぎない、という説がありますが、実際はゴッホの才能を目の当たりにして少なからず脅威を感じていたのではないかと思います。 最近読んだ、ゴッホの友人ベルナールの書簡集によると、ゴッホの死後、ゴッホの作品をパリで展示し批評家たちに見せる機会を作ろうと奔走するベルナールが、ことごとくゴーギャンに妨害された、という記載がありました。今回のゴーギャン展で「タヒチで制作した作品をボラールの画廊送ったが、個展は不発に終わりゴーギャンを落胆させた。」という解説があり、時代は前後しているかもしれませんが、ゴーギャンの焦りの現れの一つだったのかもしれない、と感じました。アルルでの2ヶ月の共同生活で、ゴーギャンがゴッホから受けた影響は、ゴッホがゴーギャンから受けた影響以上に深いものだったのかもしれない。 というのは私の勝手な想像なのですが、そんなことを考えていたからか、今回見た「我々はどこから来たのか~」では、青い背景に浮かび上がる女性の黄金色の肌の色の対比が印象に残りました。青と黄色、この補色の色使いといえば、ゴッホのアルル時代の作品「夜のカフェテラス」やオルセーにある「Starry Night」、パリ時代の「ひまわり」(写真)などたくさん思いつきます。 また、「我々はどこから来たのか~」のモチーフの一部を別の色調で描いた作品の中には、夕焼けの赤い背景に緑がかった肌で女性が描かれているものもあり、これもゴッホが描いた「ルーラン夫人」や「夜のカフェ」にある緑と赤の対比を思い起こさせました。 こうしてゴッホと比較して見られることが、(私以外にそういう人がいたかどうかは知りませんが、)ゴーギャンにしてみればうっとうしかったのかもしれないですね。ゴーギャンの個展を開いた画商ボラールはゴッホの作品も扱っていましたし。だからゴッホの個展を妨害するという行動に出たのかもしれない。そんな風に納得してみました。 今回の展覧会では、パリ時代、アルル時代、ブルターニュ時代、そしてタヒチ、とゴーギャンの放浪の人生を追うように作品が並んでいました。前半は特に人が多かったので、人垣の外から作品を見ることしか出来ませんでしたが、ブルターニュ時代の作品に好みのものがありました。この2人の女の子の絵。大地をしっかりと踏みしめる足が既にタヒチ以降のゴーギャンを彷彿とさせつつも、むき出しになり過ぎない抑えたトーンで描かれているところがいいです。 ゴッホとゴーギャンの関係を考えるとき、自分はいつもゴッホ側に立っているのですが、ゴーギャン側からだとどんな風に見えるのか、ということもちょっと考えてみたくなっていたので、そんな視点で見た展覧会でした。 (写真は6月にオルセーで見たゴーギャンの自画像。)
by fumiko212
| 2009-08-04 21:26
| アート
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Comments(2)
とっても興味深い分析ですねー。
アルルにあるアリスカンという墓地の遺跡に行ったのですが、なんてことない場所なのですが、ゴッホとゴーギャンがここでカンヴァスを並べたんだ!って思っただけで、感慨深かったです。ゴッホもゴーギャンも「アリスカン」っていう作品があるんですけど、それについては本にも「相互への影響が見られる」って書いてありました。軋轢がありながらも、いい影響を与え合ったんですね。 ところで、モンサンクレールの「リヤン エレガン」、私も魅かれて、ずいぶん迷ったのです!見た目も華やかで写真栄えするケーキですよね~
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Commented
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fumiko212 at 2009-08-08 18:01
らびっとさん
いえいえ、分析というほどじゃなくて、私、美術について書物とかほとんど読まないので、事実を知らずにいろいろ想像するのが好きなだけなんです。 >ゴッホとゴーギャンがここでカンヴァスを並べたんだ!って思っただけで、感慨深かったです。 うわー、想像するだけで鳥肌立ちました!オーヴェール・シュル・オワーズの教会での感激がよみがえりました。あー、アルルも行ってみたい!いつか行ける時は、ゴッホとゴーギャンのアルルでの作品を勉強してから行きたいと思います。 >「リヤン エレガン」、私も魅かれて、ずいぶん迷ったのです! ホント、あれこれ目移りしますよねー。金沢で食べたフロマージュのケーキもおいしかったので、次回はフロマージュ系も気になるし。また近々行きたいと思います。
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