カテゴリ:音楽( 119 )

1人の人間が亡くなるということ

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今朝、私のfacebookのフィードはこの方の写真(どれもいい写真でした。)とささげられた哀悼の言葉に埋め尽くされていました。
日本時間では昨夜入ったニュースでしたが、その後、続々とヨーロッパ、アメリカのオーケストラ、音楽家から投稿されたものでした。

朝の通勤電車の中で一つ一つ読みながら、1人の人が亡くなったことで失われるものについて考えました。
偉大な音楽家の訃報を聞いたとき誰もが思うのは、彼の生み出す新たな音楽を聴くことは二度とできないのだ、という事実。昨夜、多くの音楽ファンが感じたことだと思います。
けれど、同業者である音楽家から発せられた哀悼の言葉を読み進めるうちに、そのような事実を超えて失われたものの大きさがひしひしと伝わってきました。
偉大な音楽家であればあるほど、その人生を音楽にささげて生きてきたはずです。その人生のすべてをかけて取り組んだ末にその人の中に蓄積された音楽世界のすべてが失われてしまうのです。弟子のような存在の人がいたとしても、才能あふれる後継者と目される人がいたとしても、そのすべてを受け継ぐことはできません。どんなに技術が発達してもすべては一代限りのものなのです。

そうして失われたものの大きさを実感しながら、同時に遺していったものの大きさも感じていました。
数年前に、第三舞台の最終公演を見に行ったとき、鴻上尚史さんが書いたあいさつ文のようなものが観客に配られました。その中で、「新作を必ず見に来てくれた筑紫哲也さんに見てもらえず残念だ。けれど、生前も頻繁に会えていたわけではなく、当時も今も変わらず、自分は心の中で筑紫さんに話しかけている。」というような記述があったように記憶しています。
今朝、ゆかりのある音楽家たちからマエストロ・アバドにささげられた言葉を読むうちに、そのことを思い出したのです。彼らは、この先も、ふとした時にそうしてマエストロに話しかけ続けるのだろうな、と感じました。彼が今日の演奏を聴いたら何と言っただろうか、と。

音楽ファンである私たちがその演奏を聴くとき、間接的に、その遺していったものを受け取ることになるのだと思います。
偉大な音楽家の業績は決して一代限りでは終わらないのです。
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by fumiko212 | 2014-01-21 21:16 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

ベルリンフィルを聴いた夜に

本日、2年ぶりに2度目のベルリンフィルの演奏会を聴いてきました。
3曲のプログラムでしたが、やはり最後の春の祭典が一番印象に残りました。オーケストラが巨大な生き物になって地中の奥深くから目覚めたかのようなすさまじい音楽。かつて生でも聴いたことがあるはずだし、録音音源で予習もしたけど、こういう曲には聴こえてなかった。これを100年前に…。こんな芸術が生まれる時代を生きるってどんななんだろうか。

今、少し冷静になって全体を振り返ると、弦楽がすべてなっている時のピアニシモのクリアさ、フォルテシモの時の空気の揺れ方、木管の濁りのなさ、パーカッションの刻むリズム、全体の縦の線がピタッと揃っている状態がどんなに緩急がついても乱れないこと、そういうことの積み重ねがいかに曲の世界に没頭できるかの決め手になってるってことを感じた演奏会でした。

細かくは色々思ったこともあるし、世界各国のオーケストラを聴いたわけではないけれど、ベルリンフィルはやっぱり特別だった。
この2年では叶えられなかった、ベルリンでの演奏を聴く日が1日も早くやってきますように。

演奏会直後の感想でした。
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by fumiko212 | 2013-11-18 22:18 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

2001年の予言

2001年12月、はじめてクラシックコンサートでの小曽根さんの演奏を聞いた。曲はバーンスタインの「不安の時代」。(指揮は井上道義さん、管弦楽は新日本フィル)

その時に、いつかこの曲をニューヨークのエイブリー・フィッシャー・ホールで、小曽根さんとNYフィルの演奏で聞きたい、と思った。
この予言(?)実現するかもしれないから書き残しておきます。
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by fumiko212 | 2013-04-04 18:38 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

Kuniko Plays Reich in Senzoku

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2月9日に洗足学園内講堂で行われたパーカッショニスト加藤訓子さんのコンサートに行ってきました。
マリンバ、スチールドラムなど複数の打楽器(マリンバ様の楽器の種類と名称がわからなくてザックリとした書き方ですいません。)とご自身の演奏をサンプリングした音源が流れる10台のスピーカーとが共演するステージ。プログラムはスティーブ・ライヒの楽曲を加藤さんが編曲したものを中心に構成されています。

私がスティーブ・ライヒという作曲家の名を知ったのは最近のことで、最初に聞いたのは昨年の夏頃。それから立て続けに2回ほど別々のところから名前を聞き…。そういうときはなにがしかの縁があるもので、聴いておくべきなのです。12月に本人が来日するコンサートをと思ったんだけど既に下のクラスの席は完売。S席高いな〜と躊躇する間に時は過ぎ…、今年に入ってから見つけたのがこのコンサートでした。

加藤訓子さんを知ったのも去年の12月のことで、テレビでのインタビューとその演奏を少しだけ聞いて興味を持ちました。彼女はスティーブ・ライヒに唯一自身の楽曲の編曲を許されたミュージシャンなのだそうです。かつて彼の記譜の誤りを発見したこともあるのだとか。まだ面識の浅かった(なかった、だったかな?)頃にもかかわらず本人に伝えたところ、Congratulations.よく気づいたね、と言われ、その後の出版からは訂正されたのだとか。すごい話ですよね。

そんな風に楽しみにしていた反面、打楽器だけでコンテンポラリーミュージック、これはハードル高そうだという心配も。最初にスティーブ・ライヒを教えてくれたチェロの先生が、もし興味あったらYouTubeで聴いてみたら?とおっしゃるので通勤電車の中で聴き始めたところ、単純なリズムのループに秒殺で寝落ち。どうなることやら…。

結果ですが、寝落ちどころか最初から最後まで惹きつけられっぱなし、ドキドキしっぱなしの1時間半でした。今までこれほどまでに生音とスピーカーで聴こえ方が違う楽器に出会ってなかった。音というのは空気の振動である、というのを全身で実感。最初の音でぶわわわーっと全身に鳥肌。結局曲が終わるまで鳥肌立ちっぱなしでした。(1曲目はバッハ。マリンバなのにある瞬間はパイプオルガンのようにも聴こえた。)インタビューで彼女が、中学の頃初めてマリンバの音を聴いた瞬間にこの楽器を弾きたいと決意した、と言っていたのを思い出した。きっと彼女が聴いたのもこんな音だったんだろう。

マリンバというのは不思議な楽器だ。彼女の卓越した演奏技術の成せる技なのだろうが、マレットの選択や叩き方で音がまるっきり変わってしまう。演奏されている曲は確かにYouTubeで聴いたあの感じなのに印象は全く異なる。シンプルなライティングに照らされ踊るように演奏する彼女の姿、無機質な10台のスピーカーとその影、空間に満たされる音の波動が段々と密度を増して行き息苦しさを感じるほどだった。ただ音楽を聴いているのではなく、インスタレーション作品の中に入っているような感覚。この感覚、一昨年のベルリンフィルで細川俊夫さんの作品を聴いた時にもあった。優れた現代の音楽作品はこういう感覚をもたらすものなのかもしれない。だとしたら、既に行き詰まっていると思っていた音楽の世界はまだまだ新しい可能性が沢山詰まっている世界なのかも。一昔前のコンテンポラリーって、不快とか奇抜、難解こそが新しいみたいなところがあったけれど、洗練された感覚があればその先のもっと研ぎ澄まされた新しさ、凝縮された美を提示できるんだ。そして優れた音楽作品は優れた演奏家、真にその楽曲を理解したものに演奏されて本来の美を開花させるものなのだ。これから先も想像もつかないような新しいものに出会える希望みたいなものを受け取った気がして、なんだか嬉しくなった。

スティーブ・ライヒの楽曲についていえば、やはり最後に演奏されたNew York Counterpointが心に残った。なぜかリバーサイドパークの風景が思い浮かんだ。川の輝きとリバーサイドドライブからかすかに聞こえてくる車のエンジン音、すぐそこにあの街の喧騒があるはずなのにここはあくまでも静か、そんな感覚。聴き終わって、最初のバッハにまた繋がっていくような感じも心地よくて。

この場にいられたことを音楽の神様に感謝せずにはいられない、本当に素晴らしいコンサートだった。
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by fumiko212 | 2013-02-12 00:47 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

東京藝大ウインドオーケストラ学内演奏会@東京藝術大学奏楽堂

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5月にニューヨークで聴いたジュリアードの学生たちのコンサートにすっかり魅了されててしまい、帰国後探し出して聴きに行ったのがこのコンサート。ウインドオーケストラ、吹奏楽のクラスの演奏会です。特筆すべきはベルリン・フィル首席クラリネット奏者のヴェンツェル・フックスさんがソリストとして客演していたこと。無料コンサートだったので我が目を疑い、これはきっと学内対象のコンサートに違いない、と電話で問い合わせてしまいました。電話に出た方に伺うと、「一般に開放されているコンサートなのでどうぞおいでください。ただし、フックス先生(とおっしゃったので、学生たちの指導の一環として出演されたのでしょう。)が出演されるので早めにいらっしゃった方がよろしいかと思いますよ。」とのこと。

せっかく上野まで行くのだから、とこの時開催中だった「真珠の耳飾りの少女」を見てから開場時間の30分前を目安に会場へ。列ができてはいましたが、びっくりするほどの行列ではなく、無事に席確保できました。

R.ワーグナー(編曲:中村克己):歌劇《タンホイザー》より序曲
C.M.v.ウェーバー(編曲:山本 真):クラリネット協奏曲第2番 作品74
-管楽器アンサンブル《フルートアンサンブル》-
    P.-M.デュボワ 四重奏曲より第1楽章
   (編曲:R.ミカメニノフ)
    プリンク・プランク・スラップ・ポルカ
    髭ボレロ
G.ホルスト:第一組曲
C.T.スミス:華麗なる舞曲

■出演者
指揮:山本正治
クラリネット独奏:ヴェンツェル・フックス(ベルリンフィルハーモニー管弦楽団首席クラリネット奏者)
演奏:東京藝大ウインドオーケストラ

時間がたちすぎて細かいことはすでに記憶が薄れてしまってますが、クラリネットってこんな音が出たんだ!という聴いたことのないような澄んだ音色でした。オーケストラの中でのソロの音とは全然違うんです。かつて別のソリストの演奏するクラリネット協奏曲で聴いた音とも違う。ホールの良さなのか、フックスさんの技術力、表現力のなせる業だったのか。学生たちの音も俄然よくなったように感じるから不思議。

プログラムの中の「髭ボレロ」、気になりますよね。フルートアンサンブルはフルートばかり10人以上で演奏するコーナーでしたが、編曲者のR.ミカメニノフさん、ロシア人っぽい名前ではありますが、編曲を聴くと確実に昭和世代のコテコテの日本人です。髭はドリフの髭ダンスの髭です。アラフォー以上なら誰もが知っている昭和のメロディー満載で、演奏者が平成生まれの学生っていうのがなんだかなあ、でした。だって、これがどんなものを連想するメロディなのか体験として知らないふわふわのドレスを着た女の子たちなんだもの。

最後の2曲は吹奏楽のために作曲された曲で、編成も大きくなり大迫力。最後は大拍手で学生たちも指揮の先生も満足そうな表情でした。

それにしても、この子たちは、この先どんな音楽人生を歩むことになるのでしょうね。お正月の駅伝を見たときにも思いましたけれど、スポーツにしても音楽にしても、それで食べていける人ばかりではないのが現実だと思います。でもそれは一般学生でも同じことで、勉強したことと卒業後の仕事がリンクしていない人なんていくらでもいるのだから、これだけ1つのことに打ち込んだ青春時代を送ったというのは、その先の人生の宝になるだろうな。大きなお世話ですが、そんなことを考えてしまった演奏会でした。

これに味を占めて通っちゃうだろうな、と思っていたけれど、上野はちょっと遠いのですよね。プログラムのチェックも怠っていてその後は聴きに行けていません。近所の音楽好きのご隠居だったらそれこそ毎回通っちゃいますね。
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by fumiko212 | 2013-01-13 00:04 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

MAKOTO OZONE TRIO featuring CHRISTIAN McBRIDE & JEFF "TAIN" WATTS@ブルーノート東京

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去年、唯一聴いた小曽根さんはこんな豪華なトリオでした。ご一緒したMさんとも話したのですが、こんな風にリラックスした演奏をする小曽根さんを聴ける機会ってあまりないよねっていう貴重な機会でした。

Mさんに教えてもらった話では、近年、米国でジャズミュージシャンを取り巻く環境は厳しく、ジャズはすでに過去の音楽になってしまっているそう。ニューヨークであってもジャズミュージシャンが演奏できる場所はどんどん減っていて(確かにそうですよね。この10~15年で観光名所にもなっていたようなお店がいくつも閉店しました。)今やビッグネームであっても演奏活動だけでは食べていけないような状況なのだとか。そんな寂しい背景があって、このトリオの日本ツアーが実現したのかもしれません。
来日した2人ともが「日本ではミュージシャンをミュージシャンとして観客がリスペクトしてくれる環境がある。そういう観客の前で演奏できて光栄だ。」と語っていました。

ところで、ここ数年、小曽根さんを聴くたびに思うことがあります。それは、1人の演奏家を聴き続けるおもしろさ。その思いが年々増してきています。
私が聴き始めたときの小曽根さんはすでに40歳近くで輝かしいキャリアを確立されていましたし、リアルタイムでは全キャリアの半分も聴いていませんけれど、CDでさかのぼった分も含めたらもう少し長い期間の演奏に触れてきました。その時々で小曽根さんが表現した音楽、取り組んだ音楽、その積み重ね全部があっての今の演奏だと思うのです。
そして、これもすごく関係あると思うのですが、歩みは遅いながらも聴き手としての自分の成長もある。自分の耳が成長することで、または自分の耳の成長ではついていけなくなって、いつしか聴かなくなってしまうミュージシャンだって少なくないことを思うと、これって本当に奇跡だと思えてくる。つまりは聴き手の耳を育ててくれる音楽こそ、ずっと効き続けられる音楽なのだということ。小曽根さんの音楽はいつでも聴き手としての自分の行き先を照らしてくれているのだ。進化し続けながら決してそのルーツを否定せず、過去を糧にして未来に歩み続ける音楽だからなんだろうと思う。

私の場合はたまたま同時代を生きているある演奏家だったけれど、それがある1曲の交響曲だったり、ある時代の偉大な作曲家、演奏家、指揮者だったり、自分が演奏することだったり、いろんな道標があるのだと思う。そういう出会いをできた音楽愛好家は本当に幸せだ。私も幸せ者だと思う。
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by fumiko212 | 2013-01-10 22:41 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

ニューイヤー・コンサート@めぐろパーシモンホール

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今年のエンタメ初めは頑張れば歩いて行ける(実際は行きはタクシーだったけど)パーシモンホールで久々のN響公演。

ドヴォルザーク
・チェロ協奏曲 ロ短調 作品104
・交響曲 第9番 ホ短調 作品95「新世界から」

広上 淳一 /指揮
宮田 大 /チェロ
NHK交響楽団 /管弦楽

チェロの首席に向山佳絵子さんらしき人が座ってた!なんで?
さっき検索したら誰かのブログにもそう書いてあったので間違いないよう。で、その方のブログによると藤森さんとご夫妻なのだとか。知らなかった〜。(帰りにロビーでお見かけしました。)新世界のソロ、素敵でした。弦楽8人で弾くところ好きだった。

N響いいな〜。細かくならいくつかもっとこうしてほし〜というのもあったけどやっぱり全体が鳴っているところとか木管のソロとかおおーって思う。定演に行っていた頃はあっという間に1ヶ月で、もうか、なんて思ってたけど贅沢なことしてました。

宮田君のチェロは席が遠かったこともあってかちょっと後ろに引っ込んでる感じがしたけど…。今度はハイドンか室内楽で聴きたい。ドボルザークは曲がすんばらしいから満足です。木管との二重奏のとことか綺麗だったけど、やっぱりもうちょっと前に出てくればな〜と思った。

思い返すとオーケストラを生で聴いたのって半年ぶり?うーん、今年はもうちょっと聴きたい。
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by fumiko212 | 2013-01-07 21:10 | 音楽 | Trackback | Comments(3)

Merry ChRHYTHMas!

年に一度のお楽しみ。ベルリンフィルのクリスマス・ファミリーコンサートが明日中継されます。
昨年は12人のチェリストたちによる"Cello Christmas"でしたが、今年はリズム隊が主役。6人にパーカショニストによる"Merry ChRHYTHMas"ですって!楽しそう~。
まずはこのトレイラーで気持ちを盛り上げましょう♪真冬のベルリンからジャングルへのトリップ。90人の子供たちも踊る!楽しみです。


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by fumiko212 | 2012-12-15 23:58 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

Big night!

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by fumiko212 | 2012-09-17 22:08 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

ベルリンフィル12人のチェリストたち@サントリーホール

日曜日に2年ぶりの12人のチェリストたちの演奏会を聴いてきました。今回も期待以上に感動の時間を過ごすことができました。
今回は2階席センターの中段辺りで室内楽を聴くには少し遠すぎるかな、という距離感だったのですが、1曲目の最初の音でいきない涙腺決壊。自分がチェロが好きすぎてどうにかなっているのかと思うほど感動してしまいました。
最初に「今回は40周年の記念のコンサートではありますが、その前に、昨年の震災犠牲者にささげるために1曲目にこの曲をプログラムしました。」とスピーチがありヴェルディのアヴェ・マリアが演奏されました。
1つ1つの楽器から音が出ているというのを感じさせないような、たとえるなら朝一番に真新しい花のつぼみが音もなく開いてあたりに香りが広がるように音がホールいっぱいに満ちていくような演奏。追悼の音楽だったのもあると思うのですが、静かな水面に蓮の花が開いたように感じました。どうしてこんな演奏ができるんだろうか。オーケストラでもソリストでも表現できない、こんな音楽表現ができるアンサンブルは世界に2つとないだろうなあ、、、と、もう胸がいっぱいで。きっと、これがサントリーホールの素晴らしさでもあるのかもしれないです。

今回のプログラムは1部と2部の前半で、12人のチェリスト結成当時から演奏されていた曲が演奏されました。CDでも聞いたことのない曲ばかりだったのですが、1部で演奏された12人のチェリストたちのために作曲されたというボリス・ブラッヒャー作曲「12の独奏チェロのためのブルース、エスパニョーラ、ルンバ・フィルハーモニカ」という曲、それから12人のチェリストたちが発足するきっかけとなった曲というユリウス・クレンゲル作曲「12のチェロのための<讃歌>作品57」、どちらも素晴らしかったです。曲としても演奏も。
ブラッヒャーの曲はアヴェ・マリアとは対照的に12のチェロ、それぞれの音色が際立つような演奏。ピチカートや弦を弓でたたいたりボディを叩いたりとチェロで出せるあらゆる音が聞こえてきます。緊張感がピンと張りつめたエキサイティングな曲だった。現代音楽を聴いているときに私が陥りがちな、この曲どのくらい続いてたっけ?となりそうな曲でもあるのですが、演奏が素晴らしいので最後まで変化に富んだ曲の世界に引き込まれました。どのくらい続いてた?となるのは曲のせいではなく、演奏者のせいであることも結構多いので、やっぱり現代音楽はうまい人で聴くに限るなあというのも再確認。
2部の1曲目だった<讃歌>は夜明けを連想させるような導入が素晴らしかった。クレンゲルはニキシュ、フルトヴェングラー時代に活躍したチェリストでもあったそうで、チェロへの愛があふれている曲でした。
休憩時間に大混乱のCD売り場で店員さんを捕まえて、ブラッヒャーの曲が入っているCDがないかを尋ねたところ、現在のメンバーでは出ていないけれど古い輸入盤であるとのこと。初めて見るCDでした。外側からは収録曲もわからない状態だったのですが、帰りにライナーを見てみたらクレンゲルの讃歌もほかに演奏されたダヴィッド・フンクの組曲も入ってる!いい買い物ができました。

2部の後半はポピュラーソング中心のプログラム。この前の「題名のない音楽会」に若きチェリスト宮田大さんが出演して「チェロは歌う」という特集をしていましたが、チェロは美しいメロディラインを持ったポピュラーソングを演奏するのにも適した楽器なのです。特に印象に残っているのはビートルズのミシェル。知っているメロディなんだけど、改めてポール・マッカートニーのメロディメーカーとしての才能が存分に発揮されている曲なんだということを感じました。(クレジットはレノン、マッカートニーだけど、確かミシェルはポールなんですよね?)などとウザく語るまでもなく、とにかくグッとくるメロディなんですよね。それをチェロで演奏した日にはもう、、、グッとくるの3乗くらいググッときました。この曲、ヤマハの教則本に入ってくれたらいいのになあ。あ、ただ、一つだけ不満だったのはこの曲のイントロはやっぱりピチカートにすべきでしょう!ということ。ちなみに編曲は三枝成彰氏(彼と作ったCDも出ているそうな、、、)。ビートルズはそれこそいろんな人が無数のアレンジで演奏していますけど、オリジナルに忠実なのが正解だと思ってしまう。

アンコールではピアソラのタンゴや昨年のベルリン・フィルのファミリーコンサートでも演奏されていた「ピンクパンサーのテーマ」など。客席から笑いが漏れるような楽しい演奏でした。アンコールのラストは滝廉太郎作曲「荒城の月」でした。「題名のない音楽会」でも宮田さんが独奏され、それも素晴らしかったのですが、12人による演奏はまた違った美しさがありました。このメロディも先ほど書いたミシェルと同様にグッとくる。いや、グッとくるとはもう少し違う、もっと心の奥底に語りかけてくるようなメロディ。これは好き嫌いを超越した日本人にとっての永遠のソウルミュージックだと思いました。
特にコメントはありませんでしたが、2年前と同じくステージ脇の席で鑑賞されていた天皇皇后両陛下にささげられた演奏だったのだと思います。この曲の美しさを12人のチェリストも感じ取って演奏してくれているのが嬉しく、コンサートの最後にまたじわっと涙が出ました。
実はこの曲、チェロを習い始めて最初に習う2つのポジションだけで弾ける曲ということでテキストの最初の方に出ている曲なのです。宮田さんの演奏はまさにこのポジションだったので、あれを聴いてから練習のたびに私も弾いていました。日本人の心のどこも揺さぶらないヘボ演奏ですが、、、それでも何となく弾くことがうれしい曲なのです。

横道にそれつつ書いてきましたが、最後に、Youtubeにアップされた「アヴェ・マリア」の演奏をシェアします。コンサートの演奏ではなく、きっと開演前に録画されたものだと思います。この演奏が12人のチェリストのYoutubeチャンネルの最初の動画となったそうです。できればPCのスピーカーではなくちゃんとしたスピーカーで聴くことをおすすめします。


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by fumiko212 | 2012-07-04 02:31 | 音楽 | Trackback | Comments(0)