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モーリス・ユトリロ展でパリの復習

モーリス・ユトリロ展でパリの復習_b0031055_14581138.jpgチケットぴあで久しぶりの行列をした後は、その足で横浜高島屋へ。開催中の「没後50年 モーリス・ユトリロ展」を見に行ってきた。
本当は10月上旬に開催されていた日本橋高島屋で見てからパリに旅立とう思っていたのですが、結局いけませんでした。結果的には帰って来てから見ることができて良かったです。見てきたばかりの風景が目の前のキャンバスにある。あの漆喰の壁を見てきたからこそユトリロが込めた思いがより感じられるような気がしました。

ユトリロは生涯同じ題材を描きつづけましたが、その画風は大きく変化していきます。1910年~19年頃、ユトリロの画業の中でも最も充実した作品が生み出された年代と言われているそうです。「白の時代」と呼ばれている作品群がそれで、「色彩の時代」と呼ばれる1920年代以降の作品とはひと目見てまったく違うものだとわかります。20年代以降、ユトリロの絵が評価され始めると、継父が金儲けのためにユトリロに絵を描かせつづけた、とありました。この役割は晩年はユトリロの妻に引き継がれ、ユトリロは指示された通りに絵を描きつづけました。会場の説明文では「ユトリロは1杯の安酒のために描き、安酒と交換に絵を受け取った店主はユトリロの絵を高く売りさばくことだけを考えた。ユトリロ自身も、モンマルトルの人々も、その絵の価値に気づいていなかった。」とありましたが、私はそんなことないと思う。自分の過去の作品を模倣しつづけた画家のように言われているけれど、ユトリロは自分が愛した漆喰の壁を描くことだけはニ度としなかったんじゃないかな。

展覧会の最後の1枚は、ユトリロが亡くなった前の年に描かれた「過ぎし日のモンマルトル」(だったかな?メモしなかったのでタイトル違うかもしれません。意味はそんな感じ)でした。横長の絵で、左端にサクレクールの白いドーム、真中に風車、右隅には小さな家が数軒、そして空が大きく広がる明るい絵でした。多分これは絵葉書や自分の過去の作品から構図をとったのではなく、子供の頃のモンマルトルの丘の上の風景を思い出しながら描いたものなんだろうな、と思わせる作品です。先日のテレビ番組で紹介されていた、パリ18区区役所に展示されているユトリロ最晩年の2枚の絵の内の1枚と似た雰囲気の作品でした。「白の時代」には灰色だった空が、その絵では私がモンマルトルを歩いた日のような青空に変わっていました。

展覧会は明日まで。来年以降、京都、大阪、名古屋に巡回予定。
by fumiko212 | 2005-10-30 15:01 | アート


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